shirasaの日記

日本のどこかの人間が、とりあえず方向性なしで書いてみます。

夜行性カブトムシとの戦い

我が家にカブトムシが来たのは先々週の火曜日だった。

 

上の子が幼稚園からくじ引きが当たったとかで突然持って帰ってきた。

しかもメス1匹。カブトムシと言ってもカブトがなければ、ただのムシじゃないか。と思いながらも、持って帰ってきたのなら飼うか飼わないかとちゃんと決めなければなるまい。教育上。

 

しかし残念なことに私のカブトムシ飼育知識はほぼ無かった。小学生の時に無慈悲な飼い殺しをした事しかないのだ。大人になってからは虫と戯れる機会は皆無だった。そんなこともあって、飼う事に苦手意識さえ感じていた。

 

そこで私はなんとか飼わないという選択肢になる方法として「持って帰った本人に飼うか飼わないか決めてもらう。」という提案に行き着いた。

 

一見飼う可能性が高いと思われるかもしれないが、私には勝算があった。

 

この子は虫が苦手なのだ。

 

一年前に昆虫の展示会に行った時、動いている虫たちを見向きもせず、脱兎のごとくに出口へ逃げ出した記憶があったからだ。

 

・・・が、私の思いとは裏腹に私に言った一言は「飼いたい」だった。何があった、我が子よ。。

 

その日からカブトムシとの戦いが始まったのだ。

 

--------------

 

うちには虫を飼うための道具がなかった。

 

カブトムシには窮屈かもしれないが、持って帰ってきた時のプラスチック容器で今夜は過ごしてもらう事にした。

 

その時のカブトムシは、借りてきた猫のようにおとなしかった。

そんな事はヤツの作戦とも知らず、既に弱っていると思い込んでいた私は、四角いプラスチック容器のふたを45度ずらして息ができるようにしてやった。

私はヤツの術中にはまってしまったのだ。

 

夜中の2時。

やつは重低音の羽音を出しながら我が家を縦横無尽に飛び回っていた。

 

私も焦りから苦手意識もどこへやら、ヤツを捕まえる羽目にあった。

 

私は本棚の縁を悠長に登っているヤツを素手で取押さえなんとか例の容器に押し込むことができた。

 

捕獲後、このままではまずいということで、丑三つ時ではあったが家族会議が始まった。

 

まずヤツが逃げ出さないようにするには、虫かごが必要だろうということになった。

うちには昔金魚を飼っていたころの水槽があったが、天板が全てを覆い切れておらず、逃げ放題の状態になるからだ。

 

虫かごのついでに、インターネットで カブトムシ 飼う で検索してみた。

大体書いてあることは、以下のようなものだった。

 

腐葉土を敷き詰めろ。大事なのは湿度なので霧吹きで水を撒け。

②木を置くと雰囲気がよくなるが、一番の目的はひっくり返った時に起き上がる足掛かりのためだ。(起き上がれず死ぬこともある)

③保水のためのシートをかけろ。

④エサは自作もいいが、消費期限の長いゼリーがおすすめ。

そして、最後に良い情報が目に飛び込んできた。

⑤以上必要なものは、すべて100円均一で買える。

 

その後、蓋にキリで穴を開けてセロハンテープで止めという応急処置を施し凌ぐことにした。もちろんプラスチック容器で暴れまわる音で、逃げ出さないかヒャヒヤして眠れなかった。

 

xxx‗xxx

 

次の日、嫁に100均に言ったもらい道具を揃えたという朗報が入ってきた。

実際、出来上がった環境を見ても完ぺきに見えた。

これでゆっくり眠れるとそう思う以外になかった。

 

しかし、その夜ヤツは私たちをあざ笑うかのように逃げ出した。

 

敗因は、虫かごと その蓋の嵌め合いがが甘かったことだった。その夜はとりあえず蓋に重りを載せて何とか切り抜けたが。案の定この日も寝不足となった。

 

力いっぱい押してカチット音がするまで押し込めが何とかなることに気づいたのは次の日になってからだった。嵌め合いに気づいた後は重りを載せることもせずにいた。

 

>>>>>>>>>>>>>>>

 

そこから話は飛んで、昨日のことである。

 

それまでヤツはかごの中で飛んでみたり、保湿シートを破ってみたり、果敢に立ち向かってきたが、逃げ出すことはなかった。

 

夜3時、嫁が「カブトムシがいない」と言っているのが聞こえ目が覚めた。あたりを探しているようだが居なさそうだ。どうせ出れないと分かっていじけて土に潜っているのだろうと思って部屋の明かりをつけて私は驚いた。

 

やつは私の横をゆっくりと歩いているではないか。まるで勝ち誇ったかのように。

 

逃げ出し経路は蓋の覗き窓からのようだった。嫁が逃げ出す少し前に、覗き窓の板を叩くような音が聞いたようなので間違いないと思われる。

 

が、この覗き窓は一回横にスライドして上に引っ張らないと開かない仕組みになっている。もちろん内側からは引っ掛けるような取っ手はついていない。

 

ではどうやって窓から逃げたか。

 

普段からガタガタと音を鳴らしていたのは知っていた。

だがシートが破れていたり、土が掘り起こされたりしていたので、その時の音だと思い込んでいた。

 

それがヤツのフェイクだったのだ。

 

ヤツは何度も何度も窓を叩くことで少しずつ窓をスライドさせていたのだ。

まるで昭和の脱獄王「白鳥由栄」のように。

 

oOoOoOoO

 

現在、天窓には再び重りが乗せられている。

今日からまたカブトムシとの戦いが始まるのである。